「虎」になった20歳。八村塁が日本男子バスケを変えていく (2ページ目)

  • 小永吉陽子●取材・文 text by Konagayoshi Yoko
  • 田口有史●撮影 photo by Taguchi Yukihito

 その基礎が鍛えられたのは、ウインターカップ3連覇を果たした明成高校時代だ。何度も跳び続けるリバウンド、誰よりも速く走る速攻、球際で怯まない姿勢は、高校時代からしつこいまでの練習で習慣化されたもの。豪快なブロックショットもセンスだけでやっているわけではなく、タイミングをずらすことや叩き方の研究をしてきた。リバウンドを取って、自らボールをプッシュしてフィニッシュに持ち込むことも、内外角にわたるシュートレンジの広さも、すべては将来性を見据えてのきめ細やかな指導で身についたもの。

 そして何より「苦しいときこそ仲間を助けるエースであれ」という高校時代の恩師、佐藤久夫コーチの教えこそが、加入したばかりの日本代表でも体現されている。持ち前の身体能力に加えて、日本の高校で心技体の土台を鍛えられてアメリカに渡った選手、それが八村塁なのである。

 NCAAディビジョン1の強豪、ゴンザガ大に進んでからの2年間は、さらなる強度の練習と試合のもとで成長を遂げている。その背景にあるのは高校時代と同じく、「毎日の学びこそが大切」だとコーチ陣が語るゴンザガ大の育成方針。一つひとつの技術習得から反復練習が行なわれ、八村のシュートスキルはさらに向上しているのだ。

 順調に成長している八村が目下の課題にしているのが、「試合ではタイガー(虎)になれ」ということだ。どういうことかと言うと、常々八村が「日本とアメリカの一番の差は闘争心」と発言しているように、マーク・フューヘッドコーチからは試合に臨む姿勢について指摘を受けている。

「ルイのこの2年間はとても成長しているが、時々、日本的で控えめなところが出るときもあるし、集中力に欠けることもある。だから『試合では常にタイガーになれ』と言っているんだ」

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